就職先として電力業界を考えているという人のために、電力業界の業界研究をしてみました。
電力業界を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。

1.はじめに

電力業界と言うと、どのようなイメージを持つでしょうか?
東日本大震災により、特に東京電力は経営不振が続いています。
原子力発電の多くが停止したままの状態で、他の電力会社も苦戦を強いられています。
また、他の業界とは異なりほぼ各地域の電力会社が独占的な経営を行っているという、特殊な業界です。
電力自由化が行われたとはいえ、まだまだ各地域の電力会社の基盤は強く、これらの電力会社に就職できれば安泰といえるのではないでしょうか。
そんな、特殊な業界である電力会社の業界事情や各地域の電力会社の特色、仕事内容や今後の電力業界における課題考えてみたいと思います。


2.電力業界の概要

電力業界は東日本大震災を機に大きく変わりました。
原子力発電が停止し電力コストが増加し、電気料金の値上げが相次ぎました。
節電ブームもあり、日本の発電量は2011年を機に減少しています。
また、電力自由化が行われたことにより、電力業界に大きな変化が訪れました。
とはいうものの、各地域に存在する電力会社が強力な基盤を持っていることに、あまり変化はありません。
しかし、人々に根付いた節電意識や電力の自由化など、電力業界に大きな変化が起きていることに間違いはないでしょう。


3.主要企業と特徴について

各地域の電力会社の売り上げランキングは以下の通りになります。

1位 東京電力HD 6兆0,699億円
2位 関西電力 3兆2,459億円
3位 中部電力 2兆8,540億円
4位 東北電力 2兆0,955億円
5位 九州電力 1兆8,356億円
(データは四季報2017年度版より)

東日本大震災で大損害を受けたとはいえ、やはり、日本で一番人口の多い地域の電力会社である東京電力HDは、他の電力会社をおさえて堂々の一位です。
次に、関西圏の電力を賄う関西電力、そして、中部電力、東北電力、九州電力というランキングになりました。
他には北海道電力、北陸電力、四国電力、中国電力、沖縄電力があります。

それぞれの電力会社について特徴を簡単にまとめます。
■東京電力HD
業界最大手の電力会社である東京電力は、東日本大震災以来経営が悪化しています。
そのため、中部電力と燃料調達と発電所の新規設置に関して合意を取り交わし、経営基盤の立て直しを図っています。

■関西電力
関西電力は東京電力に次いで業界2位の地位にあり、原子力発電の割合が高いことが特徴です。

■中部電力
中部電力はトヨタなどの大手企業への電力販売で大きな利益を上げています。
浜岡原発は現在停止中です。

■東北電力
東北電力は石炭とガスによる発電が全体の7割を占めているのが特徴です。
近年は環境への影響を考慮し、液化天然ガス(LNG)による発電を促進しています。

■九州電力
九州電力は玄海原発、川内原発を保有しており、2015年に全国に先駆けて川内原発が再稼働しました。
今後は、玄海原発の再稼働を目指しています。

■北海道電力
北海道電力は他の電力会社に比べて閉鎖的なところがあると言われています。
北海道で絶大な影響力と安定した基盤を持っています。

■北陸電力
北陸電力は富山、石川、福井の北陸三県と岐阜の一部地域への電力供給を行っている電力会社です。
かつては志賀原発が稼働しており、今も水力発電が盛んなため、他の地域への売電により利益は多く電気料金が他の地域より安く設定されています。

■四国電力
四国電力もかつては伊方原発が稼働しており原子力発電の割合が全体の30~40%と非常に高かったのですが、今は稼働していません。

■中国電力
中国電力は火力発電の比率が高く、原子力発電の割合は低めです。
石炭ガス化技術の開発を進めているという点でも、他の電力会社とは一線を画しています。

■沖縄電力
沖縄電力は原子力発電所を保有しておらず、民間向けの発電割合が多いことが特徴です。


4.どんな仕事内容なのか 職種

電力会社における仕事内容とは、どのようなものなのかを見てみましょう。

■最初は検針・集金などの実務
電力会社における実務として、各家庭を回って検針、集金をする業務があります。
このような実務は高卒社員やパート社員などが担当する業務ですが、大卒者は必ず最初に経験します。
電力を使用しているならば、必ず検針員が家を訪れたことがあると思います。
小さい機器を持って各家庭を回り、裏にある電気メーターを調べてポストに検針票を入れる仕事です。
ほとんどの場合支払いは口座引き落としになっているため集金が来ることはあまりないかもしれませんが、中には現金払いの人もいますから検針のついでに集金にも回ります。
たとえ大卒であっても、これらの実務経験は最初に必ず経験させます。
電力を売るということはこういうことだ、こういう実務が積み重なって電力事業を続けられるのだということを、新入社員に身を持って教えるという目的があるのです。

■花形は燃料部や企画部
電力会社の花形部署といえば、燃料部や企画部です。
燃料部は電力を起こすためのガスや石炭などを海外から調達する部署のことです。
燃料部で調達する燃料のコストをおさえなければ、儲けを出すことはできません。
会社全体の売り上げに大きく関わってくる部署ですから、当然、優秀な人材でなければ配属されることはありません。
企画部も、新たな電力事業の企画や発電施設の建設など、重要な仕事を任される部署です。
特に、東日本大震災があってから、日本の電力会社は方向転換を余儀なくされています。
原子力発電に頼ることはできなくなり、ガスや石炭などによる発電コストは効率の悪いものです。
また、節電や環境配慮が叫ばれるようになり、太陽光発電や風力発電、水力発電といったエコな発電手法を採用する必要性が増しています。
電力自由化も実施されました。
従来通りの発電方法を採用したビジネスモデルだけでは、今後は電力会社として生き残っていくことは難しいでしょう。
そんな中、企画部の仕事は今までよりも一層、重要度が高まっているのです。

■営業所への配属
花形部署ではありませんが、各地の営業所に配属されて電力供給事業を運営するのも大事な仕事です。
各営業所でインフラ整備や設備の新たな設立、営業活動、検針・集金業務など通常業務の対応など、毎日電力を供給するための業務を行う部署です。

5.今後の課題

電力業界の今後の課題といえば、やはり原子力発電を今後どういう方向に向かわせるのかということです。
東日本大震災で福島原発が大事故を起こし、周辺の住民はいまだに帰還できていない状況です。
大量の放射能汚染ゴミをどうするか、原発周辺の放射能汚水をどうするか、炉心溶融を起こした原発の廃炉までの長い道のりなど、課題は山積しています。
この原発問題は、福島原発を保有している東京電力だけの問題ではなく、他にも原発を保有している電力会社の問題でもあります。
そして、原発が使えなくなった今、コストがかさむ火力発電の割合を減らし、環境にも配慮したエコな発電システムの供給も叫ばれています。
しかし、コストや実現性の面で、なかなか進まない状況です。
電力業界は今、課題が山積しています。
そこに飛び込もうとしている人たちには、この問題を少しでも解決に導くことが求められているのです。

6.最後に

電力業界の概要や課題についてお話してきました。
このご時世、難しい問題が数多く残っている業界ですが、だからこそ、若く新しい世代の力が求められているとも言えます。
多くの課題を正しく認識し、日本を正しい方向に導くことができる人材が求められているのが、電力業界なのです。