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1. 百貨店業界の現状は?

百貨店業界は、若者を中心に百貨店離れが進んでいることから将来性が危ぶまれています。若者向けの専門店を増やせば中高年層に敬遠されるなど、安定した顧客をつかみづらくなりつつあります。中高年層も平均寿命が伸びていることや年金制度への信頼が揺らいでいることなどから貯蓄に励む傾向があり、百貨店における消費にもあまり期待できません。また、インターネット通販の利用率が着実に高まってきていることも百貨店業界にとって脅威と言えます。日本に先駆けてインターネット通販の利用率が高まっているアメリカでは、大手百貨店が大規模な店舗閉鎖を余儀なくされるなど大苦戦しています。日本でも物流企業が悲鳴を上げるほどインターネット通販の利用は伸びています。Amazonや楽天といったインターネット通販企業が、素早く安価で配送サービスを提供する物流企業と組み合わさっている日本ではインターネット通販の利便性は高く、地価の高いエリアに実店舗を構える百貨店業界の現状は厳しいと言えるでしょう。

もっとも、明るい兆しもあります。訪日外国人観光客数が伸び続けており、爆買いこそ一服したものの依然として百貨店で高級品を購入する顧客となっています。インバウンド需要を取り込むことができれば、日本人向けの販売額の落ち込みをカバーできる可能性があります。東アジア地域では人口が10億人を超える中国が経済成長を続けており、中間層の増加で日本旅行を楽しむ層が増えれば、中長期的に百貨店売り上げを支えてくれることもあり得ます。

ただ、インバウンド需要を取り込みやすいのは都市中心部に立地する店舗が中心です。そのため、地方部の百貨店が置かれている現状はより厳しいです。すでに百貨店業界では合併が行われるなどの再編が進められてきましたが、今後も景気が悪化し売り上げが落ち込めばさらなる業界再編が進む可能性があります。また、都市部に店舗を持たない地方の中小百貨店は、廃業を余儀なくされるケースも増えてくるでしょう。


2. どんな企業があるの?

大手の百貨店としては、最大手の三越伊勢丹HDを筆頭に、大丸松坂屋を傘下に置くJフロントリテイリング、高島屋、阪急と阪神が統合してできたH2Oリテイリングなどが挙げられます。地方部にも地域に根差した百貨店が見られる場合があります。

三越伊勢丹HDは、幅広い年齢層から支持を集める傾向がある点に強みがあります。年齢層に関わらず支持されるとなれば、少子高齢化が進んで日本の人口バランスが変化しても一定の売上を確保しやすくなるからです。また、最大手の百貨店として高い知名度を武器に、中小百貨店を買収したり、インバウンド需要を存分に取り組んだりといった攻めの経営を行いやすいとも言えます。

Jフロントリテイリングは2017年に銀座で百貨店跡地を活用して大規模な商業施設を開設するなど、百貨店を傘下に持ちながらも百貨店ビジネスにこだわらない姿勢を示しています。百貨店への信認が低下しつつある日本でも、百貨店が立地する一等地を有効活用すれば、商業で利益を確保できるチャンスは十分あるでしょう。Jフロントリテイリングの取り組みが他の百貨店企業にも波及するかどうかに要注目です。

H2Oリテイリングは阪急百貨店と阪神百貨店が統合して誕生しました。阪急・阪神それぞれのブランドは残しているものの、統合したことで関西エリアにおいて大きな勢力を誇ることとなります。阪急は高級なイメージ、阪神は庶民的なイメージがもたれており、棲み分けも十分可能と考えられます。統合の成果が着実に表れてくる時期となっており、業績の成長が期待されます。

3.どんな仕事があるの?

百貨店業界では、どのような専門店を入れるかによって売り上げが左右されます。そのため、適切なマーケティングを行い、売上を最大化するための戦略を立てる必要があります。

また、近年はインバウンド需要の取り込みも欠かせません。外国人へのマーケティングは日本人を対象とする場合よりもハードルが高くなりがちです。海外で人気となっている日本らしい商品についての情報などを適宜入手することも仕事の1つです。

さらに、単に質の良い商品を販売するだけでなく、百貨店に足を運びたいと思わせる仕組みづくりも百貨店の将来を明るくする上では必要です。一時的な集客にはなってしまいますが、物産展などの各種イベントの企画も百貨店の仕事として存在します。単にモノを販売することだけを考えるわけではないのです。

4. 今後の課題

百貨店業界はインバウンド需要を取り込んでいるとはいえ、国内人口が減少すれば売り上げに下押し圧力がかかることは必至です。そのため、売上高を維持するために百貨店の魅力を高める必要があります。

まず、百貨店に足を運ぶ客を増やす必要があります。関西では近鉄百貨店が運営するあべのハルカスが開業し、展望台からの景色を楽しめるようになりました。モノを買うという目的がなくても百貨店を訪れる客を増やすことができれば、ついで買いのチャンスがあります。高額品を販売できなかったとしても、地下の総菜売り場で夕食を購入してもらったり、レストラン街で食事を楽しんでもらったりすることができれば、百貨店の売り上げ増につながります。百貨店が若い世代に敬遠されがちなのに対して、郊外のショッピングモールなどが賑わっているケースがあります。ショッピングモールと同様、百貨店も娯楽目的で足を運びやすい施設になれば、売り上げ減少に歯止めをかけられるのではないでしょうか。

また、インターネット通販との連携も今後の課題です。インターネット通販の利用率は今後も高まると見込まれます。そのため、百貨店の実店舗での販売額は減少傾向となるでしょう。販売額を維持するためには、百貨店の実店舗でしか買えない独自商品の魅力を高めたり、逆にインターネット通販での商品販売を強化したりすることが求められます。こうした課題を克服できれば、百貨店行基の将来は明るくなるでしょう。

5. どんな人が向いているの?

百貨店業界に適している人は、世の中のトレンドに精通している人です。世の中のトレンドに敏感であれば、どのような店舗や商品が顧客に求められているのかを的確に判断できます。魅力的な商品やサービスを提供する施設として認知されれば、既存顧客への売り上げ増のみならず、新たに百貨店に関心を示す層も増えることが期待できます。

また、斬新なアイデアを出すことが得意な人も、百貨店業界の将来を支える人材と言えます。百貨店業界は決して将来が明るくありません。大胆な改革を進めない限り、業界全体が縮小してしまいます。旧来の考え方にこだわらず、Jフロントリテイリングが松坂屋跡地を大規模商業施設に改装したように、先進的なアイデアを出し、実行に移せる人材が現在の百貨店業界には求められていると言えるでしょう。既存のルールに従うよりも、自分で新しいアイデアを出すことを好む人は、百貨店業界にチャレンジしてみる価値がありそうです。

6. まとめ

百貨店業界は多くの有名企業がある一方で、業績は伸び悩んでいます。近年こそインバウンド需要を取り込んで業績が回復している百貨店があるものの、先行きは不透明です。

ただ、百貨店は新たな存在に生まれ変わりつつあります。高品質の商品を買うための場所から、様々な娯楽体験等ができる施設に百貨店が変身すれば、知名度の高さと一等地に立地する店舗を活かして成長できるチャンスがあります。百貨店業界の変化を後押ししたいという意欲があれば、百貨店業界に入ってみると良いでしょう。