総務省の人口推計によると、17年10月1日時点の20~24歳の人口は、2010年に比べて4.6%減少しています。若手人材が不足するこの時代、優秀な人材を囲い込まなければ、企業の成長は鈍化していくでしょう。慢性的な「売り手市場」が続く“採用難の時代”に、リソースが枯渇しがちなスタートアップは、どのような工夫をして事業を成長させているのでしょうか。

今回お話を伺った株式会社Spectraさんは、InfrA経由を中心に1週間で120件のインターン応募を獲得しています。また、内定辞退者/3ヶ月いないの退職者がゼロであり、非常に高い定着率を誇ります。

長期インターン実施を決めた理由から、未経験からの長期インターン採用が企業を成長させる理由やSpectraさん独自の人材育成術まで、インターン採用のコツをお伺いいたしました。
   

任せる仕事・会社/マーケットの時間軸から最適な採用手段を選択する


ーー簡単に、自己紹介をお願いいたします。


浅香直紀(以下、浅香) :はい。株式会社Spectra代表の浅香と申します。前職ではメルカリという会社で働いてまして、主に地域コミュニティサービスの「メルカリ アッテ」やブランド査定付きのフリマアプリ「メルカリ メゾンズ」を立ち上げから担当していました。


今年の春に前職を退社し、学生時代からの友人と3人で株式会社Spectraを創業いたしました。弊社では「”好き”で毎日をもっと楽しく」をテーマにエンタメ領域でのサービス開発を行っております。


本日はよろしくお願いいたします。


ーーありがとうございます。まずは、インターン生を採用しようとお考えになった理由からお伺いさせていただきたいのですが、なぜ創業間もないこのタイミングで募集を開始したのでしょうか。



株式会社Spectra 代表取締役 浅香直紀氏


浅香:創業からおよそ2ヶ月が経過したタイミングで、ある程度事業の骨子が固まり、手を動かして検証していくフェーズへと変わっていくのを感じていました。明確に仕事の量が増えてきて、3人の時間だけだとやりたいことを全部はできなくなってきたタイミングでした。



私は仕事の優先度について「重要度×緊急度」で決まると考えているのですが、どちらかの要素が低いことに手を出しにくくなってきたな...という点が気になっていました。「選択と集中」という言葉はあるものの、事業を最速で軌道に乗せるまでは当たりそうなことには手を出していきたかったので、ジレンマとして感じていました。



また、自分たちがオペレーションを構築したものを回し続けるというのももったいない時間になっているなと。



そういった意味で、さらに会社/事業の成長スピードを上げていくためにも人の採用は必要だと考えました。




ーーなるほど。まずは会社フェーズの変化の中で採用をするということを決めたのですね。昨今ではSESや副業のような専門性の高い人をスポットで採用できるサービスもある中で、なぜインターンだったのでしょうか。


浅香:その点については、ミクロとマクロで整理しました。


ミクロで言うと自社観点です。自分たちはどのくらいの「時間軸」で組織と事業のスケールを考えていて、会社としてどのような体制を目指していくのかということを考えました。この視点での結論は「短期的な結果」も大事ですが、「中長期的に強い組織を目指したい」という結論になりました。また、大変ありがたいことに資金面で投資家様からご支援いただいているということもあり、長く大きく考えられる会社環境にあるなと思うことができました。


マクロで言うとマーケット視点です。自分たちのやっている事業は短期戦なのか長期戦なのか、どのような組織図を作っていくべきかのかという観点から考えました。領域的にも時間がかかるのが定石であるのと技術による変化が少ない分野なので、現状では急いで攻めるというよりも、基盤をじっくり作っていくことが重要だと考え、中長期的に勝負をしていくべきだなと判断しました。


上記の二点から、採用することを考え始めた理由でもある「重要度が高くても緊急度が低いことが疎かになってしまっていた」という点も踏まえて、インターン採用を最優先事項と決めました。


とはいえ、あくまでここまでの全ては私たちの自社分析と仮説でしかないと考え、現状の採用市場と自分たちの仮説に間違いがないのかを見極めるために、インターン媒体だけでも7社、SES・中途採用媒体・アルバイト媒体様などにもお問い合わせをさせていただき、簡単な打ち合わせなどをさせていただいて、最終的な判断をしました。


ーーそうだったんですね。確かに中長期の組織作りではインターン生や新卒の学生を入れることが文化形成にもつながりますし、オペレーションができていることを任せるなら中途採用やSESだとコストに対してオーバースペックの方も多いですよね。


浅香まさに、その通りです。当然、実績実力を共に兼ね備えた人材が社内にいることは理想的だと考えています。しかし、弊社は創業間もなく事業を立ち上げたばかりのスタートアップです。今の事業や領域からはピボットする可能性もありますし、自分たちと主義やポリシーが違う場合のリスクも存在します。


そこに、時間やお金といった大きなコストを割くよりも、事業が大きくなっていくスピードに合わせて成長していってくれる人材を採用した方が、柔軟に対応できるチームを作れるので自分たちにも合っていると考えました。また、経営メンバーと同じ、もしくは近い成長曲線での成長を期待するにあたり、前提知識が少なく吸収力が高い若くてエネルギーがある人の方が適しているのではとも考えていました。


確かに中途人材紹介やSESなど便利なサービスですが、引き換えに大きなコストがかかりますよね。それに、スタートアップが優秀な人材を採用するのは大きなお金やたくさんの時間がかかりますよね。自社でメンバーを育てることができれば、コスト面から考えてもベストな策かもしれませんね。

週100応募を超えるSpectra流媒体活用とは?


ーーでは、インターン採用を決めてからはどのように進めていったのでしょうか。


浅香 :まずは、自社の採用要件の定義を整理しました。職種別に、職種の定義・仕事情報・応募資格を洗い出しました。また、それぞれの職種に我々が提供できる事象をまとめました。


例えば、InfrAさんですと「企画」「マーケティング」「エンジニア」「デザイナー」とあると思うのですが、自社の職種はそれぞれどこに配置するべきか。また職種名称は、あくまで一般的なものであり、会社によって定義が変わることが普通なため、弊社の場合はどうなるかの解説なども行なっていきました。


(職種説明の一部)


浅香 :その後、各サービスで説明していただいた内容を考慮しながら掲載をしていった、という形になります。


ーーSpectraさんは、InfrAを導入していただいている企業の中でも、とりわけ多くの人気を集めています。それだけでは応募を集められないと思うのですが...


浅香 :当たり前のことも含まれてはいるのですが、効果があったなと感じるものは大きく3つほどありました。


1つ目は、とにかく応募ハードルを徹底的に下げることです。「土日OK」「夕方からの勤務OK」「シフト提出2週間前まで(変更可能)」「試験期間の対応可」などです。もちろん会社を始めたばかりの今だからできることもありますが、このように応募へのハードルの低さというのは非常に意識しました。エントリーシートの提出や事前課題・追加質問のようなものは応募時には基本的には用意せず、InfrAさんを使っていた際も質問事項という機能は使いませんでした。


2つ目は、「どんな会社で」「誰と」「何を」「どのように」「なぜ」やるのかを明確にすることでした。HP上で募集要項を読んだら、具体的にどんな環境でどんな仕事をするかのイメージがつくレベルまで落とし込むことで、興味をもってもらいやすくなるのと応募時点でのミスマッチや不安が減るのではという狙いからです。


3つ目は、インターンに対するスタンスの明確化です。私たちとしてはインターン生はお手伝いではなく、会社を一緒に作っていく1人のメンバーとして扱います。基本的に多くの学生はアルバイト以上の経験を期待して、インターンを選ぶと思うので、私たちもそれだけの期待を示すことが重要だと考えました。


その上で、エンタメという領域がカジュアルな仕事や分野に見える点であったりとか、メルカリ・Gunosyというようなサービスとして学生でもほとんどの人が知っている企業の名前が入っていたことが学生にとっても身近に感じられて応募しやすかったのかな、と考えております。





ーーなるほど、しかし、それだと応募が集まっても応募過多になった上に学生の情報もわからないため、むしろコストではないでしょうか。


浅香 :おっしゃる通りだと思います。とはいえ、大前提として我々のようなスタートアップが多くの方に応募をいただく機会はなかなかないため、本当にありがたいなと思います。


その中で、私たちとしては「採用可能性のある人と接点を持つことすらできないリスク」を考えた結果このような手法をとりました。採用をファネルでみたときに、一番大元にあるのが学生さんとの接点をもっていることであり、そこの数を最大化することで良い人材を採用できる可能性があげられると考えていたからです。


また、実際に応募をしていただいた際、詳細に聞きたい項目をGoogle Formで用意して、興味のある方にはまずそれを送っていました。


実は、最初このフォームで聞いているような内容をInfrAさんの質問事項に設置していた際には1日5件ほどの応募だったのですが、外して応募後に送った場合は応募が多い日は倍以上になりました。さらに回答率でも9割を超えていたため、結果的にはこの施策は非常に効果があったのではと思っています。



(実際に使用しているGoogle Form)

面接で話すべきは「業務内容」より「会社説明」。赤裸々トークで内定辞退ゼロを実現


ーー採用後の内定辞退や早期退職者はゼロだと伺いました。平均で1~2割の学生は早期退職をしており、3〜6ヶ月ほどでやめられることの多い会社様もある中で、Spectra様が採用に成功されている理由をお伺いできますか?





浅香 :私たちは、面接を「実力レベルを判断する場」ではなく、自分たちとの「期待値のすり合わせの場」と捉えていることと、「貴重な時間を使って面接に来ていただいたからには、何かを得て帰ってもらう」ということを意識していることかなと考えています。


面接の内容としては、まず会社の説明と面接官の自己紹介をします。学生さんからしてみても、誰か分からない人に偉そうに面接をされても、よくわからないと思いますしイラッとするのかなと(笑)。


具体的には、どのような思い・経緯で会社を立ち上げたのか、創業メンバーの経歴、好きなこと・嫌いなこと・大事にしていること、学生時代をどう過ごしたのか、というようなパーソナルな話は全てしています。その上で、気になることがあれば聞いていただき包み隠さず正直に答えることが重要かなと。


学生さんからすれば、面接は企業選びの一環なので、相手の立場に立って面接することが大事だと思ってて、そういう観点から上記を実施しています。人は自己開示をされなければ自己開示をできないと思っているので、その点も意識して少し多めに話すようにしていますね。


業務内容について話をするのは、それらが終わった後ですね。会社や創業メンバーのこと、事業のことを話して「一緒に働きたいか」を相互に確認しあった上で、期待値を調整していきます。逆の立場だったら、いきなり業務の話をされても、気持ちよくないですよね。いきなり「うち来てよ!」というのは(笑)。


その後に、学生さんの人となりや今の自分を形成してきた過去の経験などを聞いてます。
また、最後にフラットに質問し合う時間を設けています。たとえインターンであろうとお互いに人間性まで把握した上で働けることが理想です。そうした話し合いの時間を設けた結果、内定辞退者がゼロになっているのかなと思います。


ーーなるほど!とても参考になります。採用した学生さんは、実際に成果を挙げていますか?


浅香 :もちろんです。それぞれ職種が違うので比較するのも本質的ではないですが、WEBマーケの担当者として施策を回していたり、早速新規事業の開発に入ってゴリゴリ開発を進めていたりと、それぞれ活躍し始めていますね。


つい先日、入って1ヶ月ほどの子がメインで進めていた施策がうまくいき、サービスへの流入数が平時の3倍以上になる、なんてこともありました。まだまだこれからだとは思いますが、いい仲間を迎え入れることができたなと感じています。


ーーとはいえ、未経験者の育成は大変ではないのでしょうか?


浅香 :もちろん楽ではないですね。マネジメントコストという意味でも時間を割いていますし、業務の知識をつけるどころか、働き方や社会とは?みたいな話をしなければならない瞬間もあります。しかし、そこは自分たちもそうだったのを思い出しながら対応していますね。最初から、社会人として組織で働き成果を出すマインドをもっている人なんてほとんどいないと思いますし。


その背景には、創業メンバー3人とも大学1〜2年次よりインターンをしてきて、多くの大人にお世話になってきたという事実もあります。そのときも、中期的な視点で育成していただいていたので、そこでしていただいたことは還元していきたいなという思いもあるにはありますね。


採用市場としてみても、以前は「インターンは、すぐに成果出すこと」を前提に考えられていたと思いますが、おそらく今後は「育てること」も考えていく必要があるのかなと考えています。「ウォー・フォー・タレント」にもあるように、優秀な人材の獲得競争はすでに国内でも激化しているので、経験があり即戦力になるタイプを採用する側面と育成することで伸びそうなタイプを採用する面の両軸から考えるべきなのかなと。


また、起業をしたいと思ってインターンをする学生さんについては、出資を受けやすくなった現在だと、採用しても辞めてしまう可能性も高いと考えています。就職するにしても外資系企業や総合商社を目指す人が多く定着率が低くなる傾向がある気がしています。


なので、領域に興味があり、事業や組織文化に親和性の高い学生を採用し、育ててあげればいいと思うんです。インターン採用をスポットでみるのではなく、本採用までという中長期の考えるのであれば、こちらの視点の方が良いのではと思っています。


「インターンだから」と侮るなかれ。実力ゼロから社内のエースを育てるSpectra流Tips




ーーSpectraさんに内定したインターン生は、定着率の高さが群を抜いています。具体的に、どのようなTipsがあるのでしょうか?


浅香 :入社後1ヶ月程度は、会社の中で働くこと、組織の中で働くことに慣れてもらうことを徹底しています。さらに、適正を図る意味でも定期的な1on1面談をしたり、期待値の確認をしっかり行うようにしていますね。


また、内省の仕方を教えることで自走できるサポートをしています。ハードスキルではない観点からの成長とは、自分が行った業務を客観的に評価できて、その事象に対する分析を次に活かす力だと考えています。その繰り返しで人は成長していくと思うので、実務的でのサポートに加え、「成長を促す内省の仕方」を教えてあげるようにしています。


さらに成長サイクルを早めていくためにも、実力より少し上の仕事をお願いするようにしています。達成までのプロセスも自分で考えることができる環境なので、上長も上手に使い高い壁を試行錯誤しながら自分で越えていけるようになると、レベルが早くあがると思っています。


ーー実務的なサポートについても、具体的なTipsを教えていただけますでしょうか。


浅香 :エンジニア職のインターン生には、Rails Tutorialなどを含む技術を学ぶ研修を用意しています。一方ビジネス職の場合は、幅広い知識を得てもらうために「課題図書制度」を設けています。


その上で分からない単語を全部調べて辞書化してもらったり、著名な経営者をSNSでフォローしてもらったり、手取り足取りサポートしています。そこで得た知識は言語化してもらうことでさらなる吸収や、社内への還元になるようにもしていますね。


表面上だけでない言葉の意味を理解してもらうことや、人にわかるように簡潔かつロジカルに説明・言語化することなどは、どの職種でも必要なので、インプット・アウトプットを意識してもらうような仕組みは用意しています。


ーー40名を超えるインターン生を採用し、事業を伸ばしている ユアマイスターさんのインタビュー でお聞きしたことですが、丁寧なフィードバックがある企業はインターン生の採用率が高いように思います。





浅香 :そうですね、フィードバックはもちろん、“裏表がない”のは大事だと思います。「フィードバックをしますよ」と謳っていても、内実が伴っていなければ、採用したところですぐに辞めてしまうからです。


フィードバック内容に関しては、主観ではなく組織のトップとして客観的に伝えるようにしているとともに、答えは教えずにヒントだけ教えたり、なぜそう思うのかを深掘りしたりして「考えるクセ」をもらうように意識しています。


ーーたしかに、採用に成功しても定着しなければ本末転倒ですもんね。ちなみに、浅香さんが考える「インターン採用の成功」とは何でしょうか?


浅香 :採用・事業のグロース・経営メンバーへの還元の三点がすべてうまくいったときかなと思っています。


人の採用というミクロな視点で見ると、短期的なゴールとしては自社にマッチする人材を採用できること、中長期的なゴールとしては長い期間活躍してくれることと社員として入社してくれることかなと思っています。


それらの前提になるのは、先程話したので詳細は割愛しますが、採用の目的を見誤らないこと→求める人材の要件をソフトスキル・ハードスキルの両面から定義すること→自社の情報を正直かつ明確に伝えること→応募の障壁となるものを取り除き学生さんとの接点をもつこと→対話として期待値調整の面接を行うこと→最初は並走しなが自走できるようなサポートを行うことという一連の流れを丁寧かつ学生さんの気持ちにもなって実施していくことかなと思っています。


次に事業のグロースでいうと、経営メンバーが優先度の問題で後回しにしていたイシューをこなすことからはじまり、中期的には手を動かせる人・考えられる人として事業に携わっていってもらい、今までの人数だとできなかったことができるようになったり、よりスピード感が出るようになったりすることが理想かなと。


最後に経営メンバーへの還元については、事業開発フェースだとプレイヤーとしての成果も求められる中、組織の問題やあるべき姿を短期的にも長期的にも常に考えることや個々のインターンのメンタリングをすることで、よりマネジメントや経営観点の成長ができるのかなと思っています。




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