株式会社KADOKAWAは角川書店やエンターブレインなどを運営する出版会社でありながら、映画事業や映像事業なども手広く手掛ける企業です。

インターネット事業に強いドワンゴと経営統合し、出版・映像分野に強いKADOKAWAと好調な売り上げを維持しています。


記憶に新しいのが「君の名は。」の大ヒットです。

関連書籍や関連商品の売り上げが好調で、低調だった出版業界全体の売上も伸びています。


そんなKADOKAWAの企業研究について見ていきましょう。


1. KADOKAWAの事業内容


KADOKAWAの前身は1945年に立ち上げられた角川出版です。

角川文庫が創刊され文庫本ブームを引き起こし、1976年に角川映画の第一作「犬神系の一族」が大ヒットしました。

その後も、角川文庫と角川映画が連動して数々のヒット作を生み出してきました。


その後、1982年に「週刊ザ・テレビジョン」が創刊され、1990年には「東京ウォーカー」が創刊されました。

その後も「新世紀エヴァンゲリオン」「リング」「らせん」など数々のヒット映画を生み出します。

そして、IT化が加速する中IT事業にも積極的に乗り出し、電子書籍ストア「kobo」「Kindle」などにも作品を提供します。

そして、2014年にドワンゴと経営統合を果たし、親会社であるカドカワ株式会社が設立されました。


このような歴史を経て、今のKADOKAWAの事業内容は「映画・ゲーム分野」「インターネットサービス分野」「出版分野」「その他事業」にわかれます。

それぞれの事業内容について、簡単に見ていきましょう。


・映画・ゲーム分野


映画・ゲーム分野を扱うグループ会社には、角川ゲームスや角川映画などがあります。

ゲーム分野では、「喧嘩番長」「ダンガンロンパ」「艦隊コレクション」などが、映画分野では「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「君の名は。」などが、近年ヒットしています。

ヒット作に恵まれた映画・ゲーム分野の売り上げは好調です。


・インターネットサービス分野


インターネットサービスでは、ライトノベルコンテンツをネットで提供する「BOOKWALKER」や、NTTドコモと共同で提供している「dアニメストア」、キャラグッズ販売を行う「キャラアニ」、小説投稿サイトの「カクヨム」などのコンテンツを持っています。

低調な紙媒体での出版業の課題を克服し、電子書籍事業でしっかりと売り上げを伸ばしています。


また、音楽やスポーツ、演劇、映画、各種イベントのチケット販売事業も売り上げ好調です。

提携コンビニが発行するフリーペーパーやECサイト、各種情報誌、提携コンビニ店舗やチケットぴあ店舗、コールセンターなどを通して、レジャーやエンターテイメント市場を活性化させています。


・出版分野


出版業界は売り上げの伸び悩みが続く中、KADOKAWAはライトノベル・コミック・文芸を中心に手堅く事業を進めています。

中でもライトノベル分野は業界トップであり、「ソードアートオンライン」はオリコン年間ライトノベル部門1位、2位を独占しています。


・その他事業


KADOKAWAの事業は上記の三本柱以外にも、多角的な事業展開をしています。

具体的には、IT事業やネットブロードバンド事業への進出が効果を挙げています。

また、訪日外国人が増えたことで、訪日外国人向けSIMカード「J Walker SIM」の販売も手掛けています。

さらに、海外企業の子会社化も進めており、コミックやライトノベルの翻訳出版を目的として北米企業「Yen PressLLC」を子会社化しました。


このように、映像事業や出版事業以外にも、様々な事業展開を行っています。

特に、IT技術を活用したソリューションビジネスの展開に力を入れていることがわかります。


2.競合と比較したKADOKAWAの強み


KADOKAWAの競合他社と言えば、同じ出版業界の講談社や小学館などです。

これらの同業他社にはない、KADOKAWAだけが持つ強みとはなんなのでしょうか?


・同業の出版社にはない多角的事業が大きな強み


講談社や小学館などの同業他社にはないKADOKAWAの強みとして、映像部門や映画部門に数多くの魅力的なコンテンツを持っているということです。


出版業界では今、紙媒体で本や雑誌を売るという業態が成り立たなくなっています。

そのため、出版業界はどの企業もかなり苦戦を強いられています。

しかし、KADOKAWAでは、古くからある映画製作のノウハウやコンテンツを持っていることに加え、書籍の電子媒体事業への早い段階での参入や、ネットでのチケット販売事業など、多角的な事業経営をしています。

そのため、出版業界の景気の悪化はどこ吹く風で、売上を順調に伸ばしています。


もはや出版業界にとどまらない独自の業態を作り上げたKADOKAWAに、出版業界の中で敵はないと言えるでしょう。


・時代に合ったインターネット事業を手掛ける


KADOKAWAは、同じ映像事業を手掛ける商売敵ともいえるドワンゴと手を組みました。

その結果、インターネット事業に強いドワンゴと、出版・映像事業に強いKADOKAWAによって、時代の流れに合ったインターネット主流のコンテンツを数多く世に生み出しています。


今や、インターネットによる動画コンテンツの配信や書籍の電子化なしに、出版業界は立ち行かなくなりました。

そんな時代の流れを先読みしてドワンゴと業務提携をしたKADOKAWAは、インターネット事業をモノにすることでさらに強みを増しました。


・魅力的なコンテンツを次々に生み出している


KADOKAWAと言えば、角川文庫で出した文庫本を映画化した作品で数々の名作を生み出してきました。

「犬神家の一族」をはじめ、「人間の証明」「野獣死すべし」「探偵物語」「戦国自衛隊」「セーラー服と機関銃」「時をかける少女」「里見八犬伝」「ぼくらの七日間戦争」など、名作コンテンツを挙げればきりがありません。


そして、KADOKAWAの強みはこのような魅力的なコンテンツを持っていることではなく、次々と新しいコンテンツを生み出しているという点です。

近年では、「君の名は。」の大ヒットを生み出しました。


新しいチャレンジをしているのは、映像部門だけではありません。

低調気味な出版部門でも、ライトノベルの売り上げはかなり好調です。


過去のコンテンツに頼ることなく、次々と新しい魅力的なコンテンツを生み出せる力が、KADOKAWAの大きな強みではないでしょうか。


3.どのような学生を求めているのか


KADOKAWAの採用ページには、「私たちと一緒に、『新しい物語』を、日本に、そして世界に向けて作り出していきませんか?」という社長のメッセージが掲載されています。

KADOKAWAは常に、新しいコンテンツを新しい形で世の中に出してきました。

そして、これからも、新しいものを一緒に生み出し続けられる社員を求めているというメッセージでしょう。


KADOKAWAの新卒採用枠は、編集部門と映像部門、国内外戦略スタッフ、営業・マーケティングに分かれています。

編集部門では、フィクション、ノンフィクション、コミックの三つの分野の編集者の募集があります。

映像部門では、実写映画、アニメ映画の三つの分野があります。


どの部門でも、モノを作り出せる人、戦略的に物事を考えられる人、とことん好きがある人、自然体な人、忍耐力がある人という、KADOKAWAが求める人物像が設定されています。

具体的な大学での専攻内容や持っているスキルなどは、明記されていません。

スキルや能力は入社後に伸ばせばよく、モノづくりを進めていく上で必要な人間力が深く問われると考えるべきでしょう。



4.まとめ


KADOKAWAは出版業界に属しながら、出版事業だけでなく、映画事業、映像事業、それ以外にも様々な事業に多角的に参入しながら売り上げを伸ばしている企業です。

これからも、また新たな事業を展開するかもしれません。

新しい世の中の流れに敏感で、新しいものをどんどん取り入れるアイデアを持っている人物が求められています。

出版業界や映画、映像業界で新しい魅力的なコンテンツを世に送り出したいと考えている人に、ぴったりの就職先ではないでしょうか。