1. コンビニ業界の現状は?


 

 コンビニ業界は、都市部のオフィス街などだけでなく、郊外や地方、住宅地などにもコンビニの出店が進められたことで拡大してきました。スーパーマーケットや百貨店などほかの小売業界が縮小の危機にさらされている間も業界は拡大を続けてきたコンビニ業界は、出店余地が乏しくなってきています。

 ただ、当初は食品や日用品を販売するビジネスが中心だったのに対し、現在ではATMやマルチコピー機が設置されているほか、宅配便の受け取りや公共料金の支払いなど、幅広いサービスがコンビニで提供されています。コンビニはほかの小売店よりも商圏が狭いため過疎化が進む地方部でも比較的ビジネスを継続しやすいことなどから、今後も安定したビジネスを展開しやすいと考えられます。
 
 近年も、レンタサイクルビジネスなど新規事業に積極的に取り組む姿勢を示している業界であり、将来は未知数と言えます。体力面で劣る企業は大手3社と合併を進めるなどしており、経営の効率化にも期待できるでしょう。

2. 現在の市場シェア

 コンビニ業界は、セブン=イレブンローソンファミリーマートの3社による寡占状態となっています。サークルKがファミリーマートブランドに切り替えられるなど、大手3社によるシェアが高まる流れが続いており、今後もコンビニ業界では3社が中心的存在になると考えられています。

 大手3社の中ではセブン=イレブンが特に大きな勢力を誇っています。他の2社と比べて店舗当たりの売上高が高い傾向があることから、他の2社のシェアをさらに奪うことも考えられます。「セブンプレミアム」など高級感を打ち出したプライベートブランド商品の販売が好調であり、若者だけでなく幅広い層に親しまれるコンビニとなっていることが背景にあると言えます。

 大手3社が約9割のシェアを占めているコンビニ市場ですが、地域に密着していたり、独自性を発揮したりしているコンビニが小さいながらシェアを確保しています。大手3社に次ぐシェアはイオン系のミニストップです。さらにスリーエフ、山崎製パン、ポプラが1%前後のシェアとなっています。山崎製パンはデイリーヤマザキの名称で、店舗で焼き上げたパンの販売等が魅力と考えられます。独自性を発揮すれば、大手3社のシェアを崩せずともコンビニ業界で生き残ることは可能と言えるでしょう。

3. どんな仕事があるの?

 将来性に期待できるコンビニ業界に関心がある人は、どのような仕事があるのかを合わせてチェックしておきましょう。

 まず、コンビニ業界では商品開発・仕入れ業務が重要です。コンビニの店頭に並ぶ商品には、自社開発のプライベートブランド商品と、他社が開発したナショナルブランド商品があります。消費者にとって高い魅力となり、来店者数増につなげられるナショナルブランド商品を効率よく仕入れる力が求められます。飲食料品などのメーカー担当者と良好な関係を築いて新商品情報を把握するとともに、店舗周辺でどのような商品のニーズが高いのかを的確に判断する必要があるのです。また、利益率を高めやすいプライベートブランド商品の開発にも力を入れる必要があります。セブン=イレブンは高級感のあるプライベートブランド商品を多数販売し、実績を上げています。プライベートブランド商品は競合する他社では基本的に販売されないため、シェアを高めるうえでも商品開発は重要なお仕事と言えます。

 店舗開発もコンビニ業界の重要な業務です。コンビニ各社では業績を伸ばすために新規出店エリアを探しています。地価に見合うだけの客が見込める物件を見つけだし、地域のニーズに合った店舗を開発することで業績に貢献できます。コンビニ業界は小売業界の1つですが、不動産業界に関心がある人も店舗開発業務には関心を持ちやすいのではないでしょうか。

 コンビニ業界は、フランチャイズオーナーとして店舗を運営する経営者も多数抱えています。そのため、店舗運営に役立つアドバイスの提供等もコンビニ業界の仕事に含まれます。コンビニ経営者にとっては売上の変動が家計に直結するため、本部からの販売促進策や助言は貴重です。オーナーの支援に関心がある人も、コンビニ業界にチャレンジしてみると良いです。

4. コンビニ業界の課題について



 コンビニ業界は空白地帯に出店を進めることで拡大してきました。しかし、国内では都市部はもちろん、地方部にも十分な潜在顧客を確保できるエリアの大半にコンビニの立地が完了しています。そのため、従来の出店を進める方針による業績拡大は難しくなってきています。

 また、人件費の上昇傾向も課題の1つです。日本では物流や介護をはじめ、人材不足が深刻化している業界が少なくありません。人材を確保するためには賃金を上げざるを得ないケースもあることから、コンビニ業界においても人件費が利益を圧迫することがあり得ます。

 人材面ではコンビニエンスストアでは常識と考える人が少なくない24時間営業の継続も課題の1つです。24時間営業の実施により深夜労働をする人材を確保する必要があるものの、大手外食チェーンなどでは人材確保の難しさなどから営業時間を短縮する動きが見られます。コンビニでも営業時間を短縮する店舗が増加すれば、売上高の減少につながる可能性があります。

5. 今後の動向

 国内に出店余地が乏しくなってきていることから、コンビニ業界は今後2つの方向に向かうと考えられます。

 第一に、コンビニで提供するサービスの幅がさらに広がると予想されます。レンタサイクルやコインランドリーなど新サービスの導入が着実に進んでいることから、今後も取り扱うサービスの幅を広げて、実質的に事業を多角化すると考えられます。サービスの幅が広がれば周辺住民等がコンビニに足を運ぶ機会が増え、売上増のほか広告コスト削減にもつながります。

 あわせて、海外での出店が加速すると考えられます。アジア地域を中心に、経済発展が著しく小売企業の出店余地が豊富な国が少なくありません。日本で培った商品配送ネットワークの構築方法などを活用しながら海外に積極出店することで、成長を維持できる可能性があります。コンビニ大手3社はすでに海外展開を進めています。今後も海外展開を加速させる中でさらなる成長を遂げることができれば、国内市場での利益が頭打ちとなっても業績を伸ばし続けやすくなります。

 これらのおおきな2つの方向性に加えて、訪日外国人観光客の増加によって、空港などに展開する店舗の収益性が高まる可能性があります。外国人の中には日本で様々な体験を楽しみたい層がいる一方で、コストを抑制しながら四季折々の自然を眺めたいといった層も見られます。旅行にかかるコストを削減するにあたって、コンビニエンスストアは手軽に食料を調達できる店舗としての魅力があります。海外出店を進める中でアジア諸国での知名度が高まれば、訪日外国人が自国で親しんだコンビニチェーンを日本でも利用することに期待できます。

6. まとめ

 コンビニ業界は成長を続けている業界です。国内での出店余地は乏しくなりつつありますが、海外出店や国内店舗での提供サービスの拡大などで、まだまだ成長することが可能な業界です。また、地域の小売店として都市部だけでなく、地方部などでもコンビニは重宝されています。人々の生活を支える存在となっているコンビニ業界では事業領域の拡大が進むと予想されることから、仕事に変化を求める人もコンビニ業界への就職を考えてみる価値があるのではないでしょうか。