経団連会長の中西氏が、就職活動の時期を決める「就活ルール」を廃止すると正式に発表しました。私は今回の発表を、時代が変化する「きっかけ」ではなく、時代が変化した「結果」だと考えています。

「就職活動」と聞いて想起されるのは、「大手ナビサイトのグランドオープンと同時に、学生が一斉に企業にエントリーを行う」といったスタイル。しかしそうした就職活動も、逆求人型サービスの登場により、旧来のものになりつつあります。

そして現在、さらに新たな就活スタイルが動き始めているのです。多くの学生が早くからキャリア形成を意識し、職務経験に伴う実績やキャリア観をベースに企業を選別する就活スタイル——“就活3.0”です。

今後の新卒採用は、いったいどのような未来を迎えるのでしょうか。3年間にわたる長期インターン採用サイト「InfrA」の運営、そして長期インターンに参加する約2,000名の学生たちの動きを間近で見るなかで感じた、新卒採用の未来について仮説を立ててみました。

高橋 慶治
株式会社Traimmu CEO。”若者の価値を最大化する”をミッションに長期インターンキャリアプラットフォーム「InfrA」、10代、20代の視野を広げるメディア「co-media」を立ち上げる。


大量エントリー・大量スカウト型採用は終わるのか

まずは、大手ナビサイトが誕生した背景から新卒採用の歴史を解説していきます。

大手ナビサイトが誕生したのは、「企業と大学の間で、一定の時期まで企業から卒業見込み者に対するアプローチは行わない」という取り決めを行う「就職協定」が廃止された時期です。

大手ナビサイトが誕生する以前は、限られた高学歴の学生のみに、自由な就職活動が許されていました。というのも、大手企業は「学歴が良い」とされる、一部の大学のみにしか求人票を送付していなかったのです。そのため、「高学歴」の枠から除外された多くの学生は、企業へのエントリー方法すら分からない状態でした。この時代の就活が、いわゆる“就活1.0”に該当します。

しかし大手ナビサイトの登場により、全ての学生が、今まで応募できなかった、応募方法すら分からなかった企業へエントリーすることができるようになりました。就職活動は文字通り自由化したのです。“就活2.0”時代の到来です。


とはいえ、実際問題として、「本当に自由な就職活動ができているか」には疑問が残ります。

就職活動に臨む大半の学生には、学生時代に企業で就業体験をした経験がありません。そうした状態で就職したい企業を検討しても、候補先になるのは「名前を聞いたことがある企業」のみです。

「親が働いている業界」、「自分が利用する商品を開発している企業」、「就職先人気ランキング・年収ランキングの上位の企業」がエントリー対象になります。
これがよく言われる「ピラミッドの上位の企業に大量のエントリー(大量お祈り)が集まる」原因です。

企業側からすれば、採用したい学生はおおよそ定義されています。「学歴フィルター」や「人物像」、「実績」によってエントリーシート・一次面接によるスクリーニングが行われるため、エントリーをしたところで採用見込みがありません。

また現代は、「大量採用をすれば、会社の業績が伸びていく」時代ではありません。大手企業であっても、会ってみたい学生に企業側から声をかける「ダイレクトリクルーティング」方式による採用方式を取り入れ、学生と個別に接点を持つようになっています。

しかし多くの学生にとって、「就職活動=大量エントリー」のイメージは変化していません。学生側の視点に立てば一目瞭然ですが、保身もあり、本当に就職したい企業以外にもエントリーをします。

結果的に、学生は入社見込みのない企業に大量エントリーを行い、企業は「入社する気のない学生」の対応に時間を割くことになります。

大手ナビサイトを利用する就活は、全ての学生に選択肢をもたらしました。その事実は、誰の目にも疑いようがなく、その価値を十分に発揮しておりました。

しかし、時代は変化しています。逆求人型のサービスが、数千〜数万人単位でエントリーを募る「母集団積み上げ方式」の非効率を打破したように、もっと時代に合ったスタイルがこれから必要になると思います。


新卒市場に起きている空前絶後の変化

冒頭で「新たな就活スタイルが動き始めています」と述べました。その一端をつくったのが、2014年〜15年ほどから始まった、一部の学生の変化です。

在学中に留学や長期インターン、学生起業をする人材が増え、社会人デビューを待たずして就業体験に近い経験を積む学生が増加しました。さらにSNSの発達により、行動的な学生の状況が、誰の目にも映るようになりました。もともと行動的ではない学生であっても、いい意味で影響を受けやすくなったのです。

また、キャリア意識の高い学生が就活のアドバイスを求めるのは、基本的に“優秀な先輩”です。そもそも面識を持たない関係にあっても、SNSを通じてアドバイスを求めることも増えました。


すると、行動的で優秀な先輩たちは、後輩たちに自身の経験を踏まえたアドバイスを行います。——長期インターンや学生起業をすすめるのです。先輩から5人の後輩へアドバイスがあり、そのうち2名が実践する。そうして、倍々ゲームで“長期インターンなどの職業経験をもつ学生”が増えています。

筆者は長期インターン求人サイト「InfrA」を3年間運営してきましたが、事実、長期インターンに参加する人数は右肩上がりです。


弊社では長期インターンに参加した学生に対して、インタビューを定期的におこなっております。当たり前ですが、長期インターン経験のない学生と比較すると、格段にキャリアに対する意識が高くなっています。


そもそも学業と課外活動は敵対関係なのか

冒頭でも述べた「就活ルール」の廃止について、「就活が早期化して、学業がおろそかになる」、「インターンなどの課外活動をする事で、学業がおろそかになる」といった意見が寄せられました。

しかし、果たして本当なのでしょうか。我々はむしろ、学業と就業体験は“仲間の関係”になっていくと思っています。

事実、これまでに5,000名以上の学生と接点を持ってきた法政大学の田中研之輔教授は、自身のブログで以下のように語っています。

私は9つの大学でこれまで10年間、5000名を越える大学生、就活生と接してきました。その私の経験的データをもとに、はっきりと言えることがあります。

それは、「就活と学業」を二項対立的に考えることそれ自体が、最大の過ちであるということなのです。

就活を通して学びの大切さや深みを実感し、内定後から卒業までの間に、ギアが三段階ぐらい上がり、とことん学業に打ち込む学生をみてきました。

インターン生として、企業で働く中で、知識不足を痛感し、毎週のように本を読み漁るようになった学生も何人もいます。

つまり、「就活があるから、学業がおろそかになる」のは、「根拠のないデタラメ」なのです。もし、学業をおろそかにしているのであれば、それは就活がある/ないに関係になく、おろそかにしているだけです。学んでいないだけです。

私が大学の現場でみてきたことは、「就活と学業は、どちらかに打ち込めば、どちらかがおろそかになるというような二項対立的な関係なのではなくて、就活を通じて学業の大切さを痛感し、学業を深めることで働くことも考え直すというような相互補完的な関係」にあるはずなのです。

-----「就活ルール廃止」をきっかけに、もういい加減、本音で語りましょうよ。


つまり、「就活が早期化して、学業がおろそかになる」と述べているのは、現場を見たことがないがゆえの批判。理論上は正しくとも、実情とは異なるものなのです。

最近では、大学の学部でも長期インターン経験に単位を付与する動きも出てきています。この流れは、今後ますます加速していくでしょう。

私自身、「InfrA」を通じて長期インターンを経験した学生を数多く見た経験から、大学の授業で学問を学び(インプット)、学外での就業体験を行う(アウトプット)ことで、成長のサイクルを早めることができる感じています。


「就活2.0」から「就活3.0」時代へ

長期インターン求人サイト「InfrA」を立ち上げてから、数多くの採用担当者と接点を持ち、変化を望む学生たちを間近で見てきました。その経験を踏まえ、今後の学生時代の過ごし方は、以下のように変化していくと考えています。



これまで学生は、大学3年生になってから就職活動に本腰を入れるのが通例でした。短期インターンに参加し、大手ナビサイトから大量エントリーする、いわゆる「就職活動」です。

しかし倍々ゲームで「学生時代に職業体験や課外活動をしている学生」が増えている現状を鑑みると、就職活動云々にとらわれず、早期からキャリア形成を意識する風潮が当たり前になってくると予想されます。

そうした流れがきっかけで、時間を切り売りしてお金を得るアルバイトよりも、実務経験を得ながらお金を稼ぐ長期インターンなどの活動がより注目されるようになるでしょう。また長期インターンなどの活動を始める理由はどうあれ、職業体験がある学生は、キャリアに対する意識が高くなっていきます。

所属や年次の違う学生たちと切磋琢磨することで、成長意欲が刺激される。社員からのフィードバックを受け、そして社会人の働き方を間近に見ることで、「こう在りたい」という将来像を自分の言葉で語れるようになっていく。

すると就職活動が始まる頃には、おぼろげだったキャリアビジョンが研ぎ澄まされ、その輪郭がはっきりとしていくのです。


職務経験を通じ、キャリア観が育った学生は、内定獲得が目的化した「大量エントリー型就活」を避ける傾向があります。自分の能力を最大化できる環境をある程度理解しているので、数万社の情報が羅列されているナビサイトは、ノイズが大きいのです。

そうした流れを汲むと、企業の採用手法も変化していかざるをえないでしょう。


就職3.0の時代に向け、企業は何をすればよいのか

一般的に「学生が就職活動を考えるタイミング」とされている大学3年中期に募集をオープンにする手法で、採用活動に困らないのは、一部の圧倒的に知名度の高い大企業、もしくは知名度のあるtoC向け事業を展開している企業のみです。

多くの企業は、学生が入社を考えるタイミングで接触をしたところで、満足のいく採用活動をすることが難しくなるでしょう。「就職ルール」の廃止に伴い、学生の「争奪戦」がますます早期化していくことを考えればなおさらです。

学生たちの行動が早期化する将来に向け、企業側も変化していかなければなりません。
私が考えるに、認知向上を目的とした広報業務(ライトなミートアップやメディアへの露出など)を通じ、低学年次から接点をつくっていかなければ、理想の採用活動はできないと考えています。

接点を持つことができたらミートアップに参加し、そこから短期・長期を問わないインターンを行い、相互に理解を深めた上で、入社する流れになっていくでしょう。

そもそも、全く異なる業界や職種で、数十社に応募している現在の就活市場は、そもそもミスマッチが大前提になっているようなもの。
数十社~数百社と顔を合わせて内定を決める「お見合い結婚」ではなく、一緒に働く経験をして相性を判断し、内定を出す「恋愛結婚」がスタンダードになるべきです。

職務経験を通じ、職業観が育った学生が増えていけば、そうした考え方が当たり前になっていくでしょう。

ダーウィンの進化論に「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だけだ」とあります。新卒採用も同様、変化の最先端に立ち、新しい時代に適応していくのが重要です。


Traimmu(トレイム)では早期からキャリアのため活動する学生に向け、長期インターンサイト「InfrA」を提供してまいりました。今後は“就活3.0”時代を見据え、企業が早期に学生への認知を高め自社のファン育てていくことができ、学生がインターンなどの活動を通して早期からキャリア形成できるプラットフォームを開発していきます。

株式会社Traimmu

長期インターン求人サイトInfrA