味の素と言えば、誰もがお世話になっている加工食品や冷凍食品などを作っている食品企業です。

でも実は、あの「うま味調味料」を生み出した高い技術力で、今や世界に進出するグローバル企業になっていることを知っていたでしょうか?


そんな、世界に羽ばたく日本の食品企業、味の素の企業研究について見ていきましょう。


1. 味の素の事業内容


味の素の事業内容は、「食品」「バイオ・ファイン」「医薬・健康」の三つの分野に分かれます。

味の素が手掛けた最も素晴らしい商品は、誰もが知っている通り「うま味」と呼ばれるアミノ酸を利用した加工食品です。


この商品開発力を元に、様々な分野に事業を広げていきました。


それぞれの分野について、ご説明していきましょう。


・食品事業


食品事業は味の素の核となる事業です。

創業以来培ってきた、アミノ酸によるうま味成分の研究を活かし、その後も独自のノウハウと技術を重ねてきました。


手掛ける商品は、風味調味料やメニュー用調味料、スープ、冷凍食品、飲料など幅広い分野に広がっています。

その結果、調味料や加工食品の売り上げは、業界トップを維持しています。


食品事業は、今や日本だけでなく世界に進出しており、順調に売り上げを伸ばしています。

現在、タイやフィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどのアセアン諸国や、ヨーロッパ、北米、ブラジル、ペルーなどに開発センターやアプリケーションセンターを設置しています。


そして、途上国の栄養不足の改善などにも力を入れています。


・バイオ・ファイン事業


うま味調味料に含まれるアミノ酸製造技術を活かして、医薬や食品、調味料、化粧品への事業を展開しています。

独自の技術開発力を持った味の素ならではの、事業内容です。


具体的には、グルタミン酸と核酸を利用した調味料の開発や、各種アミノ酸による新商品の開発、加工利用など、独自の技術を生かした事業を推し進めています。


実際、バイオ・ファイン事業における研究開発費は2014年度連結決算によると、総売上高の3.2%にも及ぶ322億円に上りました。

味の素は、この事業にかなり力を入れていることがわかります。


・医薬・健康事業


アミノ酸の開発技術などを活かし、味の素は医療・健康分野にも参入しています。

具体的には、アミノ酸、核酸を原料にした医薬品の中間体開発から医薬中間体バルクビジネスに参入しました。

そして、味の素独自のバイオ医療品技術開発を行っています。


AJIPHASEというオリゴ核酸・ペプチド原薬受託製造サービスを立ち上げ、ペプチドの大量製造を行っています。

その他にも、アミノ酸発酵生産菌をベースとした独自のタンパク質受託発現サービスCORYNEXも提供しています。



2.競合と比較した味の素の強み


味の素の競合他社には、日清食品、キッコーマン、キューピー、ネスレなどが挙げられます。

即席めんなどの加工食品では日清食品が、マヨネーズではキューピーが、醤油ではキッコーマン、コーヒーやお菓子ではネスレがそれぞれナンバーワンの座にあります。


このように強力な競合他社がひしめく中で、味の素が持つ競合他社にはない強みとは何でしょうか?


・うま味調味料では他社に絶対負けない


味の素が持つうま味調味料の開発技術力は、他社にはないものです。

1908年に池田菊苗教授が昆布のうま味成分グルタミン酸を発見したことに始まる味の素のうま味調味料の研究は、100年以上続いています。


このアミノ酸の研究開発力に関しては、右に出る会社はありませんし、今後も出てくることはないでしょう。

創業以来「おいしく食べて健康づくり」という理念のもとで続けられた研究開発は、今や食品事業だけでなく、バイオ・ファイン事業や医療・健康事業に活かされています。


・世界的なマーケティング力に長けている


あまり知られていないことですが、味の素は実は世界的なマーケティング力に長けている企業です。

味の素の海外支社は、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシア、中国、台湾、韓国などのアジア圏の国以外にも、アメリカ、ペルー、ブラジル、ベルギー、フランス、ロシア、ポーランドなど、世界各国に拠点を持っているのです。


そして、味の素の袋めんやうま味調味料は、世界各国で親しまれています。


味の素が世界のマーケティングに長けているのは、現地の嗜好に合わせた商品を販売するというノウハウがあるためです。


日本で好まれる味をそのまま世界で売り出しても、売り上げアップにはつながりません。

現地の嗜好に合わせたそれぞれの国の味に近い商品を開発し売り出すことで、世界企業に発展していったのです。


・リピーターが多い


味の素の強みは、商品を繰り返し購入するリピーターが多いことです。

「だしはいつも味の素」「袋めんはこれが一番」という、常に同じ商品を買い続けるユーザーが多く、それが味の素の強みとなっています。


いつも繰り返し食べたい味を作り出すためには、やはり「うま味」が欠かせません。

いつも食べたい味を実現し続ける企業努力が、味の素が他社に決して負けない強みとなっているのです。


3.どのような学生を求めているのか


味の素では、「個性=スペシャリティを持つこと」「強い成長意識を持つこと」「キャリアを自らでつかみ取る自立した人材」を求める人物像としています。


味の素はグローバルカンパニーとして成長を続けており、今、「変革期」にあると言われています。

ただ商品を製造し販売するだけでなく、味の素だけが持つユニークな技術や製品で新しい価値を創造することが求められています。


そして、それぞれの国と地域の習慣や食文化に根差しつつ、人々の生活に貢献することができる人材を求めています。


では、具体的な募集要項を見てみましょう。

味の素の採用情報を見ると、事務系(グローバル型)技術系(グローバル型)に二種類に分かれています。


どちらも、転居を伴う転勤になる可能性があります。

日本全国に支社を持っていますから、転勤することは覚悟しておかなければならないでしょう。


さらに、どちらの選択肢にも(グローバル型)とありますから、海外への転勤もありうるということになります。


海外に事業展開を進めている味の素ですから、海外転勤も考慮に入れておくべきでしょう。

そのため、語学力についても、高い能力を求められると考えるべきです。


この二つの選択肢について、説明していきます。


・事務系(グローバル型)


事務系で採用された学生は、営業、商品企画、財務・経理、人事・総務、広報、広告、法務、知的財産、情報企画などの部署に配属されます。


商品開発における技術的な領域に関わることはなく、商品の企画開発や営業担当、総務などの社内の仕事に携わる事務系の募集です。


農学や食品、畜産、水産系の理系の大学出身者や、法律や会計を学んだ文系の大学出身者を主に募集しています。


・技術系(グローバル型)


技術系の募集で採用されると、商品の研究開発、製品開発、技術開発や企画、エンジニアリング、品質保証、知的財産などの分野で活躍します。


理系で農学や食品、畜産、水産など各分野で研究を専攻した学士、修士、博士を募集しています。

特にバイオ分野で研究をしてきた人材が求められています。



4.まとめ


味の素の事業内容や企業としての強み、求める人物像について見てきました。

味の素という企業への就職を考える上で外せないのが、海外への転勤の可能性です。


海外にいくつもの支社や事業所を持つ味の素は、今後も海外への進出路線を強めていくはずです。

そのため、海外転勤ができる、海外で働くことに興味があるという人は、積極的にアピールするのが良いでしょう。